サビ管の「これで合っているか」に答えます

「名前だけサビ管」は何が問題か?
名義貸し状態のリスクと抜け出し方

最終更新制度基準日
執筆:徳永 崇志(就労継続支援B型事業所の運営者)
初回公開
要点

「名前だけサビ管」とは、届出上はサビ管として配置されながら、個別支援計画の実務を担っていない状態です。制度は、計画の一連の業務がサビ管の指揮の下で行われることを求めています。

この状態は、個別支援計画未作成減算の該当要件に当たり得ます。率は3か月未満で所定単位数の70%、3か月以上で50%です。指導に従わない場合は、指定の取消しの検討に進むとされています。

本人の側にも、従事の実態を証明できない経歴が残る問題があります。抜け出す入り口は、実務を渡してもらう交渉と、指定権者への相談です。

名前だけ配置とは
届出上はサビ管だが実務を担っていない状態
制度が求めるもの
計画の一連の業務をサビ管の指揮の下で行うこと
事業所のリスク
未作成減算(70%・50%)・指導・取消しの検討
本人のリスク
従事の実態を証明できない経歴が残る
相談先
指定権者(都道府県・市の障害福祉課)
制度基準日2026.08.31
根拠:指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)第58条/留意事項通知(障発第1031001号)第二の1の(10)
目次

サビ管として届け出られているのに、計画の仕事はほとんど回ってこない。そういう立場に置かれている人は、実のところ珍しくありません。ここでは、この「名前だけ」の状態を制度がどう扱うのかを、条文と通知の原文から整理します。

なぜ「名前だけサビ管」が生まれるのか

名前だけの配置は、サビ管を置く義務と、要件を満たす人材の不足がぶつかる場所で生まれます。

事業所は、サビ管を置かずに運営を続けられません。就労継続支援B型なら、利用者60人以下で1人以上を置き、うち1人以上は常勤にする必要があります。欠けたままにすれば、利用者全員の報酬が減算されます。

一方で、置きたくても人がいません。のぞみの園の令和4年度調査では、サビ管等の人員確保が困難と感じている法人が48.0%でした。理由の1位は、実務経験の要件を満たす人の不足(51.2%)です。

この2つが重なると、要件を満たす人の名前で届出だけを整える、という判断までの距離が縮まります。本人が望んだ形とは限りません。頼まれて断れなかった、という始まり方も少なくありません。構造から生まれる状態なので、誰かを責めるより先に、制度の扱いを知るほうが役に立ちます。

何人置くべきかの数え方は、サビ管の配置基準にまとめています。

制度は何を求めているか

制度が求めているのは、個別支援計画の一連の業務がサビ管の指揮の下で行われることです。

名前を届け出ることは、その入り口にすぎません。指定基準の第58条は、管理者がサビ管に個別支援計画の作成業務を担当させると定めています。一連の業務の中身は次のとおりです。

  • アセスメント … 利用者に面接して、能力・環境・希望する生活を把握します
  • 原案の作成 … 意向、支援の方針、課題、目標と達成時期、留意事項を書きます
  • 担当者会議 … 支援の担当者を集めて、原案への意見を求めます
  • 説明・同意・交付 … 本人に説明し、文書で同意を得て交付します
  • モニタリング … 実施状況を把握し、少なくとも6月に1回以上見直します

第59条は、他の従業者への技術指導と助言もサビ管の責務に挙げています。どれも、名前を貸すだけでは実行できない仕事です。

そして、ここが減算の話と直結します。報酬の通知は、未作成減算に当たる場合の1つ目に「サービス管理責任者による指揮の下、個別支援計画が作成されていないこと」を挙げています。計画の書式が揃っていても、サビ管の指揮の下で作られていなければ該当し得ます。名前だけの配置は、この要件が見ている状態そのものです。

事業所にはどんなリスクがあるか

該当する利用者の報酬の減算から始まり、指導に従わなければ指定の取消しの検討に進みます。

個別支援計画未作成減算の中身
項目定め
該当の要件サビ管の指揮の下で計画が作成されていないこと。または、作成の一連の業務が適切に行われていないことです。
減算後の割合3か月未満は所定単位数の70%、3か月以上は50%です。
割合をかける相手加算を足す前の単位数です。
対象になる利用者該当する利用者だけです。事業所の全員ではありません。
期間該当する月から、解消された月の前月までです。

出典:厚生労働省 報酬告示(平成18年厚生労働省告示第523号)別表/留意事項通知 第二の1の(10)(2026-08-31確認) 原文 ↗

数え始めは、名前だけの状態に該当した月です。運営指導で見つかった月ではありません。あとから確認された場合、過去の給付費は減算後の額で計算し直すことになります。

同じ通知は、都道府県知事に遵守の指導も求めています。指導に従わない場合は、特別な事情がある場合を除き、指定の取消しを検討するものとされています。減算で終わる話とは限りません。

法律の側にも定めがあります。障害者総合支援法の第50条は、指定の取消しや、期間を定めた効力の停止ができる場合を列挙しています。人員基準を満たすことができなくなったとき、虚偽の報告をしたとき、不正の手段により指定を受けたときは、この中に入っています。名前だけの配置がどの事由に当たるかは、個別の事情によります。ただ、取消しにつながり得る話であることは、条文の並びから読み取れます。

なお、名前を借りた人が実務経験や研修の要件を満たしていなければ、話は欠如減算に変わります。この場合の対象は利用者全員です。

本人にはどんなリスクがあるか

減算や指導が向かう先は事業所ですが、従事の実態がない経歴という形で本人の側にも残ります。

減算された給付費の扱いも、指導への対応も、負うのは事業所です。名前を貸した本人に減算が付くわけではありません。それでも、本人が困る場面は具体的にあります。

1つ目は、実務経験の証明です。実務経験証明書は、従事の実態を証明する書類です。千葉県の様式では、業務期間は「要援護者に対する直接的な援助を行っていた期間」とされ、業務内容も具体的に書きます。名前だけだった期間は、あとから証明に使えません。

2つ目は、研修の要件です。基礎研修修了者が実践研修に進む経路の1つに、個別支援計画の一連の業務への通算6か月以上の従事があります(OJTの特例)。名前だけで実務に触れていなければ、この期間を満たしたとは言えません。申込内容に虚偽があった場合は、修了後でも取消し等の措置があり得ると、千葉県の実施要領は定めています。

3つ目は、書類に名前が残り続けることです。体制の届出には、サビ管として自分の氏名が載っています。実態と違う状態が長引くほど、あとからの説明は難しくなります。

証明書の書式と依頼の仕方は、実務経験証明書の書き方にまとめています。

抜け出すにはどうすればいいか

本人は実務を渡してもらう交渉から、経営者は人を育てる正規ルートの整備から始められます。

本人ができること

まず、実務を渡してもらう交渉です。材料には、ここまでの制度の事実がそのまま使えます。名前だけの状態は、事業所にとって減算のリスクそのものだからです。担当させてほしいという頼み方より、この状態は事業所の損になっている、という伝え方ができます。

渡してもらう順番は、一連の業務の一部からで構いません。モニタリングの同席から始めて、アセスメントの面接、原案の作成へと広げる形が現実的です。

並行して、記録を残してください。自分がどの業務を担ったか、どの業務を頼んで断られたかを、日付とともに控えます。あとから実態を確かめる場面で、自分を守る材料になります。

交渉が動かないときは、指定権者に相談できます。窓口は都道府県や市の障害福祉課です。通報という形をとらなくても、基準に照らした扱いを確かめる相談として使えます。

実務ではこう組めます

実務を渡してもらう交渉は、「全部やらせてほしい」より業務単位のほうが通りやすくなります。次のモニタリングに同席したい、という頼み方なら、事業所の側も日程を区切って答えられます。

記録に特別な様式は要りません。日付、業務、同席者の3つをカレンダーやメモに残すだけで、あとから実態を示す材料になります。

※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。

経営者ができること

名前を借りる代わりに、制度が用意している道具を使えます。2つあります。

1つ目は、基礎研修修了者の活用です。サビ管が配置されている事業所では、基礎研修修了者に個別支援計画の業務を担当させて、配置の人数に数えられます。根拠は告示544号のホです。2人目を実務の中で育てる、正規のルートになります。

2つ目は、みなし配置です。やむを得ない事由でサビ管が欠けた場合、実務経験の要件を満たす人を配置すれば、研修の要件を満たすものとみなされます。期間は事由の発生から1年で、条件を満たす人なら最長2年です。事前協議を求める自治体もあるので、指定権者に早めに相談してください。

どちらも、実務を渡して育てることが前提の仕組みです。名前だけの配置と違って、減算の心配をせずに人を育てられます。

次に読むもの

仕事の負担の話と、減算の数字の詳細は、別の記事にしています。

よくある質問

Q. 名前だけの配置は違法ですか?
A. 違法かどうかの断定はできませんが、基準が想定しない状態です。指定基準は、個別支援計画の一連の業務をサビ管が担うことを前提にしています。実態が伴わなければ、減算や運営指導の対象になり得ます。個別の判断は、指定権者に確かめてください。
Q. バレたらどうなりますか?
A. 現実的な帰結は、運営指導での指摘と報酬の減算です。未作成減算は該当した月から数えるので、過去の給付費は減算後の額で計算し直すことになります。指導に従わない場合は、指定の取消しを検討するとされています。虚偽の報告が絡むと、法律上の取消し事由にも触れ得ます。
Q. 断れないときはどうすればいいですか?
A. 相談先として、指定権者である都道府県や市の障害福祉課があります。通報という形でなくても、基準に照らした扱いを確かめる相談として使えます。あわせて、自分がどの業務を担ったかの記録を残してください。実務を渡してもらう交渉には、減算の事実がそのまま材料になります。
Q. 名前だけの期間も実務経験になりますか?
A. 実務経験証明書が証明するのは、従事の実態です。実態のない期間は、あとから証明に使えません。研修の申込内容に虚偽があると、修了後でも取消し等の措置があり得ます。千葉県の実施要領がそう定めています。
この記事の根拠資料
3.
厚生労働省
「同基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日障発第1031001号。最終改正 令和5年3月31日障発0331第16号)第二の1の(10)」
2026-08-31に本文で確認
最終確認:2026.08.31

この記事の更新履歴

2026.08.31公開
執筆
徳永 崇志

徳永 崇志

就労継続支援B型事業所の運営者

埼玉県志木市で就労継続支援B型事業所「ぽちぽちの道」(事業所番号 1112200454)を運営しています。サービス管理責任者と一緒に働きながら、配置基準や減算の判断に日々向き合っています。

サビ管ラボでは、厚生労働省の告示・通知や都道府県の公式資料にあたって、制度と実務を整理しています。

著者について →
テンプレート

実務経験証明書のテンプレートと書き方

実務経験証明書のひな形(Word・PDF)に、項目ごとの記入例と、退職した職場への依頼文例を添えています。

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